@article{oai:iwate-u.repo.nii.ac.jp:00010609, author = {主濱, 祐二}, journal = {岩手大学英語教育論集}, month = {Mar}, note = {本稿は、日英語の助動調構文の比較研究の一環として、英語などの欧米の言語 よりも特に日本語において顕著に現れる「視点現象」について、視点と関わりの 強い補助動調のうち「~テクル」に焦点を当て、その分析を通して、他言語とは 異なる日本語の特殊性を明らかにしようとするものである。 英語などの言語と比較すると、日本語は出来事を話し手の視点(viewpoint)から 表現する傾向が強い言語であると言われている(庵他2000,p.121)。英語にも日 本語にも、話し手の視点が深く関わっている構文がある。下の(1)と(2)に示す受動 文が、その典型的な例である。 (1) a. I was hit by John. b.??John was hit by me. (西光他1997,p.167) (2) a.私はいつもこの車に乗っている。 b.*この車はいつも私に乗られている。 上の2例は、一般的に出来事は他者(または他の物体)よりも話し手自身の視点 から描写される傾向があることを示している。 話し手の視点は、ある種の構文だけでなく、語彙的にも表される。例えば(3) に示すように、日本語の「くれる・あげる」は、それに相当する英語のgiveには ない視点制約がある述語である。また、(4)と(5)に示す補助動詞の「~テ モラウ」や「~テクル」も、視点制約が働く表現である。 (3) a.ジョンは私にりんごを{くれた/*あげた}。 b. John gave me an apple. (4) a.私は太郎に食事を作ってもらった。 b.??太郎は私に食事を作ってもらった。 (cf.太郎は私に食事を作ってくれた。) (5) a.太郎が私に小包を送ってきたよ。 b.*私が太郎に小包を送ってきたよ。 (cf.私が太郎に小包を送ってあげたよ。) (4)と(5)から、「~テモラウ」も「~テクル」も、行為の影響を受ける人物が話し 手であることを要求する点で共通していると考えられる。両者の違いは、行為の 影響を受ける人物が、「~テモラウ」では主語位置にあるのに対し、「~テクル」 では後置詞句「~に」置かれるという文法的な違いである。 本稿で主に取り上げるのは(5)の「~テクル」文であるが、実際に「~テクル」 が使われている文を調べてみると、(5b)のような文(節)であっても、自然な解 釈が可能な事例がいくつか観察された。そこで、本稿では、補助動調「~テクル」 の持つ文法的な制約について、文の構造や話し手の視点と関連させながら考察することにする。加えて「~テクル」の分析を通して、この現象が示す言語学にお ける理論的含意についても述べる。}, pages = {63--72}, title = {日本語の補助動詞「~テクル」の人称制限と話し手の視点}, volume = {13}, year = {2011} }