@article{oai:iwate-u.repo.nii.ac.jp:00011284, author = {平田, 光彦}, journal = {岩手大学教育学部研究年報}, month = {Mar}, note = {筆者が大学の専門課程で書を学び始めた当初、「字を書くのではなく、線を書く」、「字を書くのではなく白を書く」といった教示を恩師や先輩方からいただいた。これは、「線を書いた結果が文字であったと考える」また「書とは白を書くことである」等と換言できるであろうか。もちろん書は文字を書くという前提をふまえての助言であるが、書く、観るという行為における「意識の転換」を促すこの比喩は、単体の文字をきれいに書く、あるいは整えて、丁寧に書くといった「テキストとしての文字の姿」を美的に彫琢する次元とは別種の美意識が、書の中に隠されていることを予見させる。  本稿の目的の一つ目は、王朝仮名古筆を対象として、単なる文字の美しさにとどまらない、こうした美の諸相を詳らかにすることである。また同時に、書字行為にまつわる様々な意識を分析(1)することが二つ目の目的である。特に美意識や感性の働きを視点として、筆意の詳細な分析による検討を行いたい。  そうして得られた知見について、文芸や美術、日本文化や美学など、周辺にある領域と相関させて考察を試みることで、書の世界や書に関わる研究領域の見通しが広がると考える。本研究を、書と書を取り巻く諸領域とを繋ぐささやかな結び目としたい。  従来、書の領域で書美を研究対象とする場合には、例えば中国の書論にたいする解釈や評価、書き手の人物評伝ということに集約される傾向があった。また、書きぶりそのものを研究対象とする場合には、書風や個人の書きぶりを分類するという意味での筆跡分析によって、その書が歴史や書風、価値的評価の上で定位される位相などを論述することがおおよその目的であった。したがって現在のところ、筆意の分析を手法として得られた知見を研究上の観点を明らかにするためのエビデンスとするアプローチは希少である(2)。 本研究の構成は次の通りである。  第一章では、本研究の予備知識を得るため、仮名の成立過程を確認する。また仮名完成期の夜明け前にあたる、女手時代の仮名に対する美意識を考察する。  第二章、第三章では、王朝仮名古筆の名品に数えられる「三色紙」を対象に、書美をめぐる感性について研究する。第二章では仮名の線が形成する流れや響きを手がかりとして、第三章では空間を視点として、考察を行う。  第四章では、前章までの考察内容を整理し、今後への展望を得ることとする。  なお、本研究では美意識の語を「美に関する意識。美に対する感覚や判断力」という一般的な意味で使用する(3)。}, pages = {113--130}, title = {王朝仮名古筆にあらわれた美の諸相}, volume = {75}, year = {2016} }