@article{oai:iwate-u.repo.nii.ac.jp:00011309, author = {我妻, 則明}, journal = {岩手大学教育学部研究年報}, month = {Mar}, note = {児童虐待防止法と言われる「児童虐待の防止等に関する法律」が施行されたのは平成12年である。この施行以来、児童相談所での児童虐待相談対応件数は年々増加し、平成23年度は、59,862件(速報値)にも上っている。これらの被虐待児の約一割は、家族分離により各種施設に措置されており、虐待の程度が重症だと考えられている。具体的には、各種施設等での被虐待児の占める割合は、平成20年2月1日現在の調査では、情緒障害児矩期治療施設が71.6%、児童自立支援施設が65.9%、児童養護施設が53.4%と半数を越えている。半数以下ではあるが、母子生活支援施設には41.4%、乳児院には32.3%、里親には31.5%といずれも約三分のーの被虐待児がいる。平成23年10月1日現在ではあるが、それぞれの施設等の児童の現員数は、37か所ある情緒障害児短期治療施設が1,140人、58か所ある児童自立支援施設が1,331人、585か所ある児童養護施設が28,533人、261か所ある母子生活支援施設が6,250人、129か所ある乳児院が2,843人、委託里親が2,971世帯である里親が4,244人である。これらのことから、概算ではあるが、合計約22,000人という多数の被虐待児が上記施設等にいることになる。 これらの被虐待児について、杉山は、被虐待児の示す臨床的特徴から第四の発達障害ととらえるべきではないかと主張している。つまり、「『子ども虐待は保護をすればそれで終わり』あるいは『虐待の心の傷に対しては心理治療を行えば十分』。もし、そのような誤解が一般的に広まっているのであるとしたら大きな悲劇である。子ども虐待は脳自体の発達にも影響を与え、さまざまな育ちの傷害を引き起こす。」と述べている。そして、杉山の勤務する「あいち小児センター」の病棟を説明した後「これだけの条件をもつ施設は、おそらく我が国においてはほかにあまりないと思われる。それでもなお、被虐待児への治療は大きな困難に直面せざるをえない。」と虐待治療の困難さを述べ、その理由を第一に問題行動が噴出すること、第二に治療関係が不安定であること、第三に家族全体に対応する必要があること、第四に家族の中でケアを要する者の数が増えて行くことを挙げている。また、増沢は、虐待がもたらす影饗について、心の発達への阻害、身体的発達の害、解離性症状、盗み、徘徊、嘘などの子どもの素行の開題、暴力に対する親和性、性的行動に対する親和性、トラウマの後遺症などを挙げている。そして、被虐待児への援助の困難から「近年援助者のバーンアウトが問題となっています。バーンアウトとは、援助を行い続けた結果、援助者が燃え尽き、意欲を喪失していく傾向のことです。しかし現状はバーンアウト以上の状況がうかがわれます。援助過程で子どもの罵声を浴び、暴力を受けるなど、心身の傷つき体験がしばしば生じています。この状態が深刻化することで、『燃え尽き』というよりも『傷つき』による心のダメージから援助への熱意が奪われていく事態が生じているのです。」と述べている。 以上のような援助の困難性を抱える被虐待児は、義務教育年齢である者はすべて何らかの形態で学校に通学していることになる。情緒障害児短期治療施設に入所している子どもが通学する学校の形態を、生島他は、養護(特別支援)学校型、独立校型、分校・分教室型、地元校型、混合型、施設内学校型の6種類に分類して「子どもたちが受ける教育―学校の形態は千差万別の感があり、なぜこんなに違いがあるのだろうかと考えざるを得なかった。」と述べている。 そして、「情短施設の入所児童たちが通う学校においては、学級崩壊などの危機的状祝に面しているところも存在しており、被虐待児童の教育の難しさが痛感されている。」と述べている。ところが、保坂他が「このように学校における施設入所の被虐待児への対応は大きなテーマであるにもかかわらず、これまでほとんど研究の対象となってこなかった。」と述べているように、従来の特別支援教育においても、研究の対象となってこなかった。特に、施設に併設されている病弱特別支援学校においては、施設に入所している被虐待児のほとんどが通学して来ることとなり、その困難さは相当のものとなるのであるが、それに対する研究はほとんどないものと推察される。 そこで、本研究では、被虐待児に対する学校教育に関する先行研究を調査し、特に病弱特別支援学校で被虐待児に対して適切な教育を実施するための基礎資料、特に教育課程と指導法について情報を得ることを目的とする。}, pages = {85--92}, title = {病弱特別支援学校に在籍する被虐待児童生徒への教育課程と指導法に関する文献研究}, volume = {72}, year = {2013} }