@article{oai:iwate-u.repo.nii.ac.jp:00012755, author = {池田, 成一}, journal = {人間・文化・社会}, month = {Mar}, note = {現代の思想的課題の一つの中心が「消費社会」の問題にあることは,現在広く認識されつつあるように思われる。例えば昨年,社会学老兄田宗介氏は,常に原理的・思想的な考察を好む氏にふさわしく『現代社会の理論』と題した一般向けの新書を刊行したが,この本は,その副題である「情報化・消費化社会の現在と未来」が示すように,「情報化社会」とならんで「消費化社会」という概念で,現代社会の根本的特徴を捉えている1)。 見田氏は,「現代の社会の理論は,この現代の情報化/消費化社会の,光の巨大と闇の巨大を,ともに見はるかすものでなければならない」(Mii) とする。即ち,現代の「情報化/消費化社会」の「光」の面とは,それがつくりだした欲望の「デカルト空間」-「自由な空虚な無限性の形式としての空間」(M27)が固有の「楽しさ」「華やかさ」「魅力性」(M35)に満ち,「大半の人びとにとっては,少なくとも相対的に,またさまざまな条件つきでは, この情報化/消費化社会は,世界で最も魅力的なシステムである」(M122)ことである。しかしこの「光」の裏面にあるのは,この社会システムの「限界問題」としての環境問題・資源問題であり,また,「南の貧困」と「北の貧困」という,相互に意味を異にした「貧困」の拡大である。しかし見田氏は,その「闇」にも関わらず,「消費の社会」という思想とシステムに正しさの根拠があるのは,それが生産の自己目的化という狂気から人を自由にする限りにおいてであった。(消費)のコンセプトを徹底してゆけば,それはわれわれを,あらゆる種類の効用と手段主義的な思考の彼方にあるものに向かって解き放ってくれる。(M170) と述べて,「情報化/消費化社会の(否定ではなく)転回」- 「この情報化/消費化社会の依拠する根拠,人間の欲望と感受の能力の可塑性と自由ということ自体を,根拠とし基軸として方向を転回すること,自然収奪的でなく,他者収奪的でないような仕方の生存の美学の方向に,欲望と感受の能力を転回すること」(M169以下)を現代社会の課題とするのである。 このような見田氏の論は,その結論がきわめて一般的な抽象論の段階をでないことも含めて,「消費化社会」の光と闇の中で,方向をはっきりとは見いだせない現代の状況を象徴しているだろう。我々も又,このような状況の中でともに模索せざるを得ない一人であり,見田氏以上に具体的な解決策を提起できるものではないが,思想史を研究する立場から何らかの思索の糧を提供できないであろうか。}, pages = {385--400}, title = {「消費社会の思想史」の可能性をめぐって-キャンベル『ロマン主義の倫理と近代消費主義の精神』を手がかりに}, year = {1997} }