@article{oai:iwate-u.repo.nii.ac.jp:00014101, author = {現代行動科学会誌編集委員会 and 菊池, 美歩 and 織田, 信男}, journal = {現代行動科学会誌}, month = {Sep}, note = {近年、うつ病患者の自殺が深刻な社会問題となってきた。しかし、うつ病患者の受診率は低く、経済的な理由や病院が近くにないといった物理的理由、悩みを抱えていながらも専門機関を利用するほどでもないと考える人等さまざまな背景があると思われる。そこで、この問題の対策として医療機関への受診率を上げる試みに加えて、治療法の向上とともに個人が持っている自己治癒力の向上を目指すことが有効であると考えられる。 清水(2010)によると、イギリスではうつ病の治療として認知行動療法が第一選択とされており、日本でも普及がはじまっている。認知行動療法では、認知の歪みを修正するための認知的技法として、クライエントに筆記を中心としたホームワークを課すことが多い。これらのホームワークは、面接者が面接時にクライエントの状態をより正確に確認する機能とクライエントのセルフヘルプを促す機能を持つ。筆記によるホームワークは複数ある(Kazantzis & L’Abate,2007; Stallard,2002)が、Padesky(1994)が提唱したPositive Data Log (以下、PDLと略す)は、適応的な肯定的スキーマの証拠となる出来事を記録し、肯定的スキーマ獲得の一助とする認知的技法である。このPDLは、認知行動療法の理論に基づき、しかも簡便な技法でクライエントにとって負荷が小さいなどの利点を持つ。 ところで、スキーマとは、かなり一貫した知覚・認知の構え(坂野,1995)をさし、ある出来事が起こった際、その出来事をどのように解釈するかについては、その人の持つスキーマによって変わる。Beckの理論(1967)を参考にして坂本(2002)は、「抑うつスキーマ」がネガティブな出来事により活性化し、体系的な推論の歪みが生じ、自分の意志とは関孫なく意識に上ってくるネガティブに歪んだ考え(自動思考)をもたらし、その結果として抑うつが発生すると報告した。したがって、スキーマの修正は抑うつの予防・低減にとって重要なものであるが、多くの時間を要するものと思われる。Padesky(1994)によると、 PDLはクライエントの認知の誤りのプロセスを修正し、クライエントにとって比較的短期間で、非常に困難であると予測されるスキーマ変容を可能にする。しかし、PDLの実際の介入期間は、3ヵ月(福井・貝谷,2012)から6ヵ月(Padesky,1994)までである。これらの筆記期間は、Pennebaker & Beall(1986)をはじめとしたトラウマまたはストレスフルな出来事を感情と一緒に繰り返し筆記させる研究や対象者自身が筆記を行うことで自身の心身の健康を向上させることを目的とした筆記開示研究の期間に比べて長い。後者の介入期間は、一般的に3日間(遠藤, 2009;佐藤,2012;塚原・矢野・新山・太田,2010)、1週間(織田・堀毛・松岡,2009)、3週間(関谷・湯川,2009)と1ヶ月以内であることが多い。これは、これらの筆記開示研究では抑うつ感情(織田ら,2009)や怒り感情(遠藤,2009)を測定しており、スキーマ変容を目的としているPDLと比較すると短期間での効果が期持できるためであると思われる。 しかし、PDLに関する研究は日本では研究数が少ないので、短期間の介入でPDLが抑うつをどの程度低減させることができるのか、また、抑うつと関連のある推論の誤りや自動思考にどの程度影響を及ぼすかを検討することは重要であると思われる。さらに、記録する肯定的スキーマの証拠数については、1日1つとしている手続き(福井ら,2012)と、できるだけ多くの証拠を記録するように教示する手続き(Padesky,1994)があるが、本研究では、後者の手続きを踏襲する。理由はスキーマの変容には本来時間が長くかかると考えられるが、肯定的スキーマの数を多く筆記できる参加者であれば短期間であってもスキーマを修正しやすいと考えたからである。つまり、記録する肯定的スキーマの証拠数といった介入課題の遂行度の違いによって心理的健康に及ぽす効果が異なるかについて検討する。}, pages = {11--22}, title = {Positive Data Logの心理的健康へ及ぼす効果について}, volume = {31}, year = {2015} }