@article{oai:iwate-u.repo.nii.ac.jp:00014105, author = {現代行動科学会誌編集委員会 and 宮澤, 志保 and 秋元, 頼孝}, journal = {現代行動科学会誌}, month = {Sep}, note = {顔は人間にとって特別な刺激である。顔は、個人を識別するための重要な情報であるだけでなく、その表情から感情状態を知ることができる。これまで、顔刺激の検出の認知特性について、複数の刺激の中からターゲット刺激を検出する視党探索課題(Wolfe,1998)や、高速系列視覚提示(RSVP)課題を行い、一つ目のターゲットの検出から500ms程度の問、二つめのターゲットの検出が阻害される現象(Attentional blink (以下AB),Chun & Potter, 1995)などを利用して実験的検討が行われてきた。その結果、顔刺激は他の刺激と比べて検出が容易であるが、倒立提示するとその優位性が消失すること(Yin,1969)が知られており、その原因は顔刺激が正立提示された場合には知覚的特徴(feature)の処理と配置情報(configural) の処理の両方が行われるのに対し、倒立提示された場合には後者が阻害されることによると考えられている(Farah et al., 1995; Bartlett & Searcy,1993)。さらに、先行研究では、ポジティブな情動価を持つ表情(i.e.,幸福顔)はネガティブな情動価を持つ表情と比べて倒立効果を受けにくいことも示されており、前者が知覚的特徴と配置情報の両方に基づいて識別されるのに対し、後者の識別は配置情報に大きく依存していることが示唆されている(Chambon et al., 2006; Durand et al., 2007)。 一方、どの表情が効果的に検出されるのかに関しては、ネガティブな刺激である怒り顔の検出優位性を示す結果(Hansen & Hansen, 1998; Öhman et al., 2001) と、ポジティブな刺激である幸福顔の検出優位性を示す結果(Juth et al., 2005; Craig et al., 2014)が混在している。怒り顔の検出の優位性については、怒り顔が潜在的な脅威を意味する刺激であるため、素早く自動的に注意が捕捉されるという仮説が提案されている(Öhman & Mineka, 2001)。しかしながら、視覚探索課題を用いた顔刺激の検出に関する研究のレビュー(Becker et al., 2011)は、怒り顔の検出優位性が低次の知覚的特徴によって生じている可能性を示唆している。例えば、顔を倒立提示した場合には配置情報の処理が阻害され、表情による注意の捕捉が阻害される(Farah et al., 1995)のにも関わらず、Öhman et al. (2001)では、倒立提示した場合でも怒り顔の検出上の優位性は消失しなかったという知見は、潜在的脅威による注意の捕捉ではなく、知覚的特徴による効果であることを示唆している。 幸福顔の検出優位性に関しても、幸福顔が持つポジティブな社会的意味が自動的に注意を捕捉するという仮説が提案されている(Mack et al., 2002)。 しかしながら、幸福顔の検出上の優位性についても、情動による注意の捕捉の効果ではなく、知覚的な特徴によって生じている可能性が示されている。例えはMiyazawa & Iwasaki (2010)は、幸福顔、怒り顔、中立顔を刺激としてRSVP課題を行い、ABの効果量を測定し、正立提示と倒立提示の両方において幸福顔の検出優位性を報告している。 ところで、RSVPにおいては、ABに加えて、短時間に同種の刺激が繰り返して提示された場合に二つ目の刺激を見落としてしまう現象(Repetition blindness (以下RB))も知られている(Kanwisher,1987)。両者は類以した現象ではあるが、ABは二つ目の刺激が何(“types”)であるかを検出することの失敗に起因するのに対し、RBは二つ目の刺激が一つ目の刺激とは別のもの(“tokens”)であることの検出の失敗に起因するとされ、両者は異なったメカニズムに基づいていると考えられている(Kanwisher,1987)。しかしながら、RB事態における表情の効果を検討した研究は数少なく、またその結果も一貫していない(Buttle,2010;宮澤・秋元,2010;Mowszowski et al., 2012; Yamaoka & Umeda,2012)。Buttle (2010)は、顔写真を刺激として用いて、表情(幸福顔、悲しみ)の効果と人物の同一性の効果について検討を行った。その結果、表情が異なっていても同一人物であればRBが生じたが、表情が同じであっても人物が異なっていればRBが生じないという結果を得ている。宮澤・秋元(2010)では、顔写真(幸福、怒り、中立)と風景写真を刺激として用い、表情に寄らず顔刺激は風景と比べてRBが生じにくいという結果を得ている。一方、Mowszowski et al. (2012)も顔写真を用いて実験を行い、ターゲットが同一人物の場合において、非脅威表情条件(幸福顔、悲しみ顔)でRBが生じたが、中立表情条件および脅威表情条件(怒り顔、恐れ顔)ではRBが生じないという結果を得ている。Yamaoka & Umeda (2012)は図式顔を刺激として用い、表情(幸福顔、怒り顔、かき混ぜ顔)と刺激提示時間を操作して実験を行った。その結果、怒り顔とかき混ぜ顔ではRBが生じたが、幸福顔ではRBが生じないという結果を得ている。 このように実験問で大きく異なる結果が得られている原因のーつとして、刺激提示時間の違い(特に情動処理に影響すると考えられている)に加えて、実験で使われた顔刺激の知覚的特徴の違いが影響している可能性が考えられる。そこで本研究では、顔の表情と提示方向を操作してRSVP課題を行い、それらがRBに与える影響を検討した。なお、Buttle (2010)では表情が同じであっても人物が異なる場合にはRBが生じないことを報告しているが、その正答率が98%と極端に高く、課題の難易度が適切でなかった可能性も否定できない。そこで、本研究では人物の同一性についても要因に加えることとした。}, pages = {1--7}, title = {レピティション・ブラインドネス課題における顔刺激の検出 : 表情と倒立効果}, volume = {32}, year = {2016} }